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多摩境高校は田舎の高校ということもあってか校庭が広い。
その広い校庭には授業の終わりとともに運動部の生徒がたくさん出てくる。
ぼくと牧野は陸上部のジャージ姿の生徒を探した。
「あ、英太、多分あれじゃないかな」
牧野が指さした先には紺色のジャージの生徒が何人かいた。
背中に白でトラック&フィールドと書かれている。
「牧野、なんだよトラック&フィールドって」
「英太知らないん?陸上部のことだよ」
「ホントに?なんか違うような・・・まぁいいか」
ぼくと牧野が紺色ジャージ軍団に駆け寄ると、こないだ校門のとこでぼくを勧誘した茶髪の男の人がいて、声をかけてきた。
「お、仮入部?」
「はい!」
牧野は元気よく返事した。
「はい、ええ、まぁとりあえず」
ぼくの返事は曖昧。いつも通りの”なんとなく”テイストだ。
それでもその茶髪の男は爽やかな笑顔のまま「そっか、じゃあヨロシクね」なんて言った。
モテそうだな・・・と思う。
「それで、二人はどっち?」
訳わからん質問だ。
男か女かって意味か。そんな訳ないか。じゃあなんだ?
「長距離志望です!」
牧野は平然と答えた。
あぁ、そういうことね。短距離か長距離ってことか。
飛ぶのとか投げるのとか滑るのとかは選べないのかな。
あ、滑るってのは無かったっけか。
「そうかぁ長距離か。よかったよかった。オレは長距離二年の雪沢。ヨロシクね。二人は?」
「牧野です!よろしくお願いします」
「相原です」
答えてから思った。
なんとなく陸上部の見学・・・仮入部に来たんだけど・・・・・・。
流れでいつの間にか長距離を希望したことになってないか。
長距離って、つまり長い距離を走るってことだよな。
それって辛くないか?短い距離より。
そんなことないのかな。
ていうか何メートルから長距離なんだ?
そんなこと考えてたら雪沢と名乗るその先輩がよくわからない事を言い出した。
「よし、今日は仮入部組のタイムトライアルをしてみよう!」
ナニソレ。
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