入部

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牧野によるとタイムトライアルってのは要はレースだ。 色々意味合いをはしょってる気もするけれどレースするっていうことだととらえた。 試合に出るって事じゃなくって、今日ここでみんなのタイムを計ってみようという事だって話だ。 「でも何でレースすんだ?」 「わっかんねーけど、オレら1年の実力を見ようってことかな」 牧野は自分の胸に向かって親指をさして言った。 「ここでいいタイム出たらいきなりレギュラーかもよ」 「なんだよ牧野、レギュラーって。ガソリンか」 「違えーよ。スタメンってことだよ」 なんか違う気もするけどまぁいいや。レースすりゃいい。 そんなことしてると雪沢先輩が号令をかけた。 「よーし!長距離集まれー」 するとぼくと牧野のほかに4人の男子生徒がやってきた。 この4人は紺色のジャージじゃなくて自前のジャージだ。 てことは僕らと同じ一年生かな。 「おーい、1年だけじゃなくて穴川も来いよー」 穴川と呼ばれた人は紺色ジャージだ。 「もうやんのかよー」 とか悪態ついて歩いてきた。なんか感じ悪い坊主頭だ。 「やるよ。よし、これで全員だ」 雪沢先輩は集まったメンバーを見まわした。 雪沢先輩、穴川先輩、そして僕ら仮入部の1年が6人。 全部で8人か。こんなもんなんだね。野球部みたいに大勢いる訳じゃないんだね。あ、もしかして弱小陸上部かな。 「今日は仮入部の1年だけでタイムトライアルをする。でもその前に校庭で30分くらいジョックするからな。とりあえずアップしよう」 また雪沢先輩が意味わからん言葉を駆使する。 後でこっそり牧野に聞いて知ったんだけど、ジョックってのはゆっくり走ること・・・ジョギングだという。 アップってのは準備体操・・・ウォーミングアップだとか。 「陸上ってのはイングリッシュな世界なんだぜ」 牧野ってほんと信用できん。 そんな感じでぼくの初めての陸上の練習は始まった。
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