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■3
次の日は高校の登校日だったので、3年7組のメンバーは大多数が集まった。昨日サトコが告白してきた夕方とは、教室の様子は打って変わっている。誰もいなかった机には、それぞれ席の主がいるし、窓の外はオレンジ色ではなくて昼色だし、黒板の前には教師がいて、何より今は朝だ。
「いよーし、センター試験まであとわずかだな。みんな、頑張ってるか?」
大学への出願方法などの説明をされた後、卒業式の練習へ、寒い体育館へ向かう。男子はいいとして、女子はスカートだから寒そうだよな。そんなことを考えていたらサトコと目があった。サトコはにっこりと、女子の笑い方をした。
俺はスマホで検索をかけた。『告白 保留 日数』。適当な広告が出てきた後、質の悪い、どこの馬の骨が書いたかわからない、薄っぺらい記事が出てくる。
今の世の中は不便な用で便利でもある。電話、メール、メッセージ、ボイチャ、なんでもある。俺はサトコをわざわざ呼び出して、告白に『NO』を言うつもりはなかった。
俺はない頭を必死に捻った。告白して、次の日に断られたら、サトコはどう考えるだろう。それとも、次の次の日なら? 一週間後は? あまり待たせてしまっても酷だろう。俺は考えあぐねた挙句、土曜日を挟んだ、日曜日の、夕方の微妙な時間帯に、スマホのメッセージでこう返した。
『今は受験に集中したいから、ごめんね!』
4分後位に、サトコから返事が返ってきた。パンダのキャラクターが、泣いている画像だ。
『わかった 忙しい時にごめんね』
俺はほっとしたと同時に、もやもやとしていた。俺はA大学を受験するのだ。A大学は地方の小さい大学で、文芸サークルに入るとしたら、サトコにまた絡まれるだろうな、という予感である。
ベッドでごろごろと寝転がりながら、気分転換にスマホでゲームをしようとして、起動のボタンを押す前で踏みとどまった。このゲームはサトコとフレンドになっている。『受験で忙しい』と返したハナから、ゲームにログインするのはなんだか気が引けた。
それから、別のゲームにログインしようとして、俺は眉にシワを寄せた。このゲームも、サトコにIDを教えていたっけ。これはオンラインゲームではないが、『何前ログイン』など表示が出るやつである。結局、その日の俺はゲームをせずにそのまま寝ることにした。
次の日、学校が終わった放課後、部活に行こうとする足すらも、俺は止める。部活にはサトコがいるんだった。推薦入学済みで暇なサトコは、いつも文芸部の部室にいる。顔を合わせるのは気まずい。気まずいと言うより、俺が嫌だった。……俺はどうすればいいか考えあぐねた。俺はサトコに包囲されていた。
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