赤い靴 ＝Ａｎｏｔｈｅｒ Ｓｔｏｒｙ＝

　俺の名はデュラン。久しぶりに賑やかな街の中を歩く。擦れ違う人達と何気なく挨拶をかわし、笑顔を交換する。悪くはない。
　だが、こんなのどかな時間を満喫するために、街中まで出てきた訳ではない。ある事件を調査する為だ。俺は王室の命を受け、昨今、話題になっていた『赤い靴事件』の調査をしている。
　赤い靴を履いていた美しい少女カーレンが突然、狂ったように踊り出し、森の中へと消えて行った事件が街中で話題になり、王室の耳にも入ってきた。王室としては取るに足らない事件のように感じるが、これが新種の病気だとしたら、街中に蔓延してしまうと大変なことになるとの話になった。
　確かに城下の人間達が踊り狂っていなくなったら、大変なことになる。かつては、黒死病が蔓延して、街が幾つも壊滅したこともあった。そんな話も話題に上り、俺は今回の事件を調査することになった。
　どこから調べるか……。
取り敢えず、今、教会に身を寄せているカーレン本人に会ってみることにした。両足首を切断し、義足で生活をしているとのことだが、元気に暮らしているとの話だ。会って、話を聞くことくらい何の問題もないだろう。