赤い靴 =Another Story=

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   俺は街へ戻る途中、森の中に住む首切り役人の所に寄った。彼の名前はロペス。俺の質問に対して、素直に応じてくれた。  ロペスの話によるとこうだ。  突然、目の前に踊り狂うカーレンが現れた。彼女の踊り狂う姿は異様そのものであり、何かに取り憑かれているのではと思った。彼女を抑え込んだが、叫び声を上げ、かなり激しく抵抗された。  やむを得ず、彼女をロープで縛り上げたが、彼女は激しく身体を動かし、両脚をバタバタと動かし続けた。  彼女が、履いていた赤い靴をやたらと気にしていたので、脱がそうとしたが、彼女の足と一体化しているような状態で、脱がすことが出来なかった。  彼女が落ち着くことはなかった。こんな状態が数日も続いていたら、彼女の命に関わるので、彼女の了解を得て、彼女の両足を切断した。  ロペスに、切断した彼女の両足について尋ねた所、彼女の両足は埋めたとのことだった。切断された両足は、動き回っていなかったとのことだった。彼女が見たらショックを受けるだろうと思い、埋めたと言っていた。  カーレンが見たのは幻覚だ。間違いないだろう。  俺はロペスにお礼を言って、街に戻る。調べたい事は他にもあった。  カーレンは二回、街の中で踊りだしている。街中で噂になり、王室の耳にも入ったくらいだ。見ていた人はそれなりにいた筈だ。  俺は街中を歩き、情報を集める。目撃した人達からの情報を整理するとこんな感じだ。  一回目は街の教会の前で起こった。カーレンが不意に踊り出し、止まらなくなった。この時は、皆で彼女を抑え、靴を脱がす事が出来た。  周りに怪しい人物がいなかったか尋ねた所、教会の入り口の所に、よれよれの茶色の服を着た老人を見たとの情報が入った。  顔立ちは彫が深く、白い立派な感じの鼻髭と顎髭を蓄え、落ち着いた感じがしていた。けど、彼女が躍り出し騒動になると、その老人はいなくなっていたとのことだ。  他には、その老人はカーレンと話をしているようにも見えた。話が終り、カーレンが教会に入ろうとした時、立ち上がりいなくなると同時に、カーレンが狂ったように踊り始めたとの情報も出てきた。  二回目はパーティー会場だ。目撃者を当たるのには、手間がかからなかった。貴族が主催したパーティーなので、招待者名簿を当たっていくだけで済んだからだ。  こちらの情報を整理するとこんな感じだ。  カーレンは狂ったように踊り出す前に、軍人のような人と話をしていたとの情報が入った。この情報は多くの招待者から得ることが出来たので、確実なものだろう。  また、この軍人のような人についても、カーレンと話をしてから、いなくなると同時に、カーレンが狂ったように踊り出したとの情報だ。  カーレンは「神の使い」は、色々な姿に変えて私の前に現れたと言っていた。  今回俺が得た情報に出てくる、老人と軍人のような人が、カーレンの言っていた「神の使い」で間違いはないだろう。  問題はその男の正体だ。こいつが、カーレンを踊り狂い続ける状態に導いた奴だ。
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