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それから数日後の事だった。
隆成が婚約者を連れて我が家を訪問していいかと尋ねてきた。
大事な話がしたいとの事だった。
しかも家族と食事会をしたいとも言い出し、俺は一途の不安を覚えつつも了承した。
妻は俺と隆成の秘密を知らない。
家族で知ってるのは俺以外で母と妹と隆康の3人だけだ。
因みに妻には俺と隆成の関係は昔、宮邊と一緒に食事をして、そこからの縁だと言っておいた。
3人で一緒に食事をしたのは嘘ではないし、妻は疑うことなく信じてくれた。
それよりも、時の人がこの家にやって来る事に歓喜していた。
政治家に会えても、メディア中心の有名人に会う機会は滅多にないので、純粋に嬉しかったのだろう。
妻は隆成とその婚約者を快く歓迎してくれた。
久しぶりに会う息子はいつにも増して、生き生きとしていた。
笑顔を絶やさず、食事中も気さくに妻の相手をしてくれていた。
いつも会う時は真顔で笑顔はそんなに見せる事はなかった。
恐らく隣にいる女性がそうさせたのだと確信した。
婚約者の冴子さんも、とてもいい人でこの人も波乱の半生を送っていた。
感情的な妻はすぐに泣き、冴子さんに同情した。
俺も冴子さんに同情したが、嫌な予感が頭に過ぎった。
そして、俺の予感は見事に的中した。
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