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大事な話とは俺に結婚式に出席して欲しいとの事だった。
そして、冴子さんのお父さんの代わりにバージンロードを歩いて欲しいと頼んだ。
俺はそれを丁重に断った。
本心は行きたくて仕方ないのだが、俺が出席したら、そこから勘のいいマスコミが疑問を持ち、調べる可能性が高い。
それに詩織とも会うことになる。
謝罪する絶好の機会だが、結婚式という華やかな場を汚したくない。
だが、それは隆成も分かっており結婚式の件は建前に過ぎなかった。
妻が応接室から離れた隙に隆成は本題に入った。
「実は冴子の叔父夫婦がやって来て金をくれと言ってきてるんです。冴子にあんな仕打ちをしたのにも関わらずですよ」
案の定、本題は俺のコネ目当てだった。
冴子さんの過去を聞いて大方の予想はついた。
彼女の半生を狂わせたのは、お父さんを騙した詐欺師と彼女を虐待した叔父夫婦だ。
「俺としてはあの叔父夫婦を許すつもりは毛頭ございません。即刻通報し、婦女暴行と人身売買の罪として逮捕しました。だけど……」
「冴子さんの証言では証拠不十分だと?」
「実を言うと……そうですね。何せ、過去の話なので残ってる物的証拠も少ない。彼女の痣も消しちゃいましたからね。そこで……」
「法務大臣時代のコネを使って、叔父夫婦を半永久的に君達に会わせないようにすると………そう言いたいのだな?」
俺がそう答えると、隆成は不敵な笑みを浮かべつつ「少し違います」と言った。
そして、冴子さんの手を固く握りしめて、俺の間違いを指摘した。
「半永久的ではありません。永遠にです」
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