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「なるほど。『南雲事件』ね」
隆成からあらかた説明を聞いた私はすぐに納得した。
「冤罪かどうかは調べてみないと分からない。だから知り合いの探偵に連絡を取ってみてくれ。その間、俺はゲームを進める。黒坂先生にも誘うつもりだ」
「裁判でもやるつもり?」
「まぁ、そうだな」
夫の声からして分かる。
私が反対しても無駄だと………
「決意は固いようね」
「ああ……君には迷惑をかける」
「迷惑だなんて思ってないわよ。放送中に冤罪が証明されればある意味で、あんたは歴史に名を残す男になるんだから。私達の花道作りに支障がきたさないわよ」
「冴子………」
「悔いのないよう、思う存分にやりなさい」
私はなんの躊躇いもなく、夫の背中を押した。
「ありがとう。君は最高の妻だ」
「知ってる」
隆成の喜ぶ声を聞いて、私も少しだけ嬉しかった。
「裁判を開くなら裁判長が必要よね。誰にするか決まってる?」
裁判長を誰にするか……
隆成の頭の中では既に1人決まっていた。
「本当の親父に頼もうかと思うんだ」
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