第11話 きっかけ

4/27
前へ
/372ページ
次へ
「なるほど。『南雲事件』ね」 隆成からあらかた説明を聞いた私はすぐに納得した。 「冤罪かどうかは調べてみないと分からない。だから知り合いの探偵に連絡を取ってみてくれ。その間、俺はゲームを進める。黒坂先生にも誘うつもりだ」 「裁判でもやるつもり?」 「まぁ、そうだな」 夫の声からして分かる。 私が反対しても無駄だと……… 「決意は固いようね」 「ああ……君には迷惑をかける」 「迷惑だなんて思ってないわよ。放送中に冤罪が証明されればある意味で、あんたは歴史に名を残す男になるんだから。私達の花道作りに支障がきたさないわよ」 「冴子………」 「悔いのないよう、思う存分にやりなさい」 私はなんの躊躇いもなく、夫の背中を押した。 「ありがとう。君は最高の妻だ」 「知ってる」 隆成の喜ぶ声を聞いて、私も少しだけ嬉しかった。 「裁判を開くなら裁判長が必要よね。誰にするか決まってる?」 裁判長を誰にするか…… 隆成の頭の中では既に1人決まっていた。 「本当の親父に頼もうかと思うんだ」
/372ページ

最初のコメントを投稿しよう!

102人が本棚に入れています
本棚に追加