第11話 きっかけ

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「やぁ、冴子ちゃん。元気だったか?」 電話は厳格な声からヘラヘラ声へと変わった。 「ちゃん付けは止めてくださいって言った筈ですよ」 「そうだっけか。それよりも何だい用って?君からかけてくれるなんて珍しいな。もしかしての件、考えてくれたのか?」 「はぁ!?」 早速、不快な冗談を言い放つ隆康さんに憤りを感じた。 そのすぐ直後…… ――ゴンッ!! 「いっ!」 電話の向こうから蹴り音と隆康さんの悲痛な叫び声が聞こえた。 多分、飛武さんが息子さんを蹴ったんだろう。 向こうから隆康さんの「何すんだよ」と小さく聞こえてくるのが分かった。 「わ、悪かったよ。冗談にしては度が過ぎた」 隆康さんは素直に謝罪した。 私はそれを許した。 ではないのは分かっていた。 逆にどうしたらそんな冗談が言えるのか呆れてしまった。 「いいですよ。それよりもお聞きしたいことがあります」 「話は聞いた。目の前にいたからな。『南雲事件』だろ?俺もあの夜の事はよく覚えているよ」
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