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性根を入れ替える事は良い事だ。
だけど、やり方がまどろっこしかった。
――素直な気持ちを持って接すれば、和解が成立するのに……
それができないのは彼の性格がそうさせているのだろう。
ともあれ、事情を聞いた私はそれを夫に伝えた。
隆成は「バカだな……」と小さく呟くと再び、隆康さんに電話をかけ、食事会のやり直しを提案した。
それ以降、隆康さん夫婦とは良好な関係を築いていた。
隆康さんの皮肉と下ネタ口調は相変わらず変わらないが本心ではないので、素直に笑うことができた。
――たまに不快になる時もあるけどね。
そんな隆康さんも『南雲事件』について協力的だった。
「兄貴と喧嘩になって、警備員とウエイターが俺達を無理矢理、引き離したんだ。お互い後ろから羽交い締めにされて、俺はウエイターの方だったな」
「どうしてウエイターだったて言いきれるんです?」
「目の前にいた兄貴を押さえつけていたのが警備員だったからさ。ネームプレートが見えたが確か名前は…………」
隆康さんは頭を整理しながら、4年前の出来事を思い出していた。
そして思い出したのか突然、大声を上げて名前を言った。
「そうだ!そうだ!思い出した!藤樫だ!」
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