第11話 きっかけ

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隆康さんの電話を終えると、私は次に知り合いの探偵に依頼を頼んだ。 「急な事だから、お金に糸目はつけないわ……ええ、それじゃあ、よろしくお願いしますね」 話を終えようとした丁度その時だった。 ドアのノック音が鳴り、若いADが入ってきた。 「失礼します。冴子さん、お客様をお連れしました」 ――来たわね。 「ありがとう。お通しして頂戴」 「はい……どうぞ」 私がそう言うと、ADは私の客を部屋に入れた。 妹の潤子と婚約者の秀人さんだ。 実は中田ちゃんに頼んで、この2人を会場へご招待した。 私達夫婦がどんな仕事をしているのか見せておきたかったのだ。 「こんばんは。今日はありがとうございます」 潤子は嬉しそうに私にお辞儀した。 「いいのよ理沙さん。これが最後だから、こっちにいらっしゃい」 「はい。失礼します」 潤子は終始、他人行儀だった。 当然だ。 まだ記憶は蘇ってないし、姉とも名乗っていない。 だから私も潤子とは呼ばず『理沙さん』と呼んでいた。
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