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隆康さんの電話を終えると、私は次に知り合いの探偵に依頼を頼んだ。
「急な事だから、お金に糸目はつけないわ……ええ、それじゃあ、よろしくお願いしますね」
話を終えようとした丁度その時だった。
ドアのノック音が鳴り、若いADが入ってきた。
「失礼します。冴子さん、お客様をお連れしました」
――来たわね。
「ありがとう。お通しして頂戴」
「はい……どうぞ」
私がそう言うと、ADは私の客を部屋に入れた。
妹の潤子と婚約者の秀人さんだ。
実は中田ちゃんに頼んで、この2人を会場へご招待した。
私達夫婦がどんな仕事をしているのか見せておきたかったのだ。
「こんばんは。今日はありがとうございます」
潤子は嬉しそうに私にお辞儀した。
「いいのよ理沙さん。これが最後だから、こっちにいらっしゃい」
「はい。失礼します」
潤子は終始、他人行儀だった。
当然だ。
まだ記憶は蘇ってないし、姉とも名乗っていない。
だから私も潤子とは呼ばず『理沙さん』と呼んでいた。
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