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――コンコン………
肝心な時に邪魔が入った。
「冴さん、中田です」
ドアの向こうから中田ちゃんの声が聞こえた。
さっきまでの緊張は消え去り、真実を伝えるのは後回しとなった。
――中田ちゃん。空気読んでよぉ……
とはいえ呼んだのは私だ。
夫が裁判をするので、プロデューサーと編成局長には話しておこうと思ったからだ。
それに溜息をついたものの、少しだけ安堵した。
まだ心の準備ができてない証だった。
夫が見たら笑うでしょうね。
「この話はまたあとでね」
私は潤子にそう言うと、ソファから立ち上がった。
「お待たせ」
VIPルームから出ると、中田ちゃんと牛山編成局長が立っていた。
「すいません。先客がいたようで……」
「いいのよ。こちらこそ仕事中なのにごめんなさい」
「それで話しというのは?」
「実は主人のことで話があるの」
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