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「しかし、冴さん……」
中田ちゃんが何か言おうとした時だ。
隣にいた編成局長がそれを遮るように言った。
「いいよ、冴さん。やってくれ」
編成局長の優しい声に私は頭を上げた。
「局長っ!」
中田ちゃんは思わず、大声を上げた。
しかし編成局長は至って冷静だ。
「中田ちゃん。チャンピオンの最後のわがままだ。こうなったら、とことんやるしかないよ」
編成局長は中田ちゃんを諭した。
「俺たちは加瀬隆成のお陰で良い夢を見させてもらった。その恩をまだ返しきっていないじゃないか」
「しかし、その分煮え湯を飲まされてきたじゃないですか?」
中田ちゃんの鋭いツッコミに私はぐうの音も出なかった。
しかし、それでも編成局長の意思は固かった。
「そうだな。だがそれは俺達にも責任があると思うんだ。長くチャンピオンの座に居座り続ける加瀬隆成に抵抗するために新しいチャンピオンを作り出そうと画策した。ニコニコ食品が良い例だ。そういった下心がチャンピオンに見透かされていたんだ」
「局長………」
「全責任は俺がとる。だから冴さん、思う存分やりなさいとチャンピオンに伝えといてくれ」
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