第11話 きっかけ

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「現状を見るに、コロッセオを抜くのは確実でしょう。そしてこのまま一気に今年1位の称号も手に入れようというのが局長の思惑です」 長年、この業界に携わって来て分かった事がある。 配信サービスや録画予約があっても、テレビマンにとって高視聴率を取るという事は勲章を取るという事に等しい。 視聴率が高ければ高い程、勲章は立派な物となり、テレビマンに箔が付く。 だから私は中田ちゃんの話を聞いても別段、驚く事はなかったし、話を聞いてすぐに納得できた。 「局長は視聴率を取る術を心得ています。華麗なるショー。予期せぬハプニング。危険を冒してまでの映像。多分、冴さんの話を聞いて、視聴率を取るきっかけをできたと内心は喜んでたでしょうな」 「きっかけ……」 「とはいえ、生半可な映像は撮りません。テレビマンの意地ってのがありますからね。やると決めた以上、チャンピオンが満足頂けるような映像を撮らせていただきます」 いつの間にか中田ちゃんの眼が燃えていた。 やっぱり彼もテレビマンだと、察知した瞬間だった。 中田ちゃんは私に頭を下げて去ろうとしたが思い出したかのように、振り向いた。 「すいません。実はチャンピオンには内緒でサプライズゲストを呼んでいたんでした」 「サプライズゲスト?」 「本来なら本戦が終わった後に、派手にご登場させる予定でしたが、予定が狂ったので明かしておきます」 中田ちゃんは何も知らされていなかった私の顔が怒りで満ちる前にゲストの正体を明かしてくれた。 「チャンピオンのお父様とお母様です」
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