第1話 嵐のような楽屋

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局内は慌ただしかった。 苦情の電話が殺到し、ネット内は炎上、会場はブーイングの嵐に見舞われた。 これ全て1人の男の気まぐれによって、行われたものだ。 本来ならば出禁にしたっていいくらいなのだが如何せん、この男には頭が上がらなかった。 プロデューサーもこの3月に配属が決まったディレクターである俺でさえも…… 「先生、本っ当に頼んますよぉ」 プロデューサーの中田の力のない声を隣で聞きながら、ディレクターの俺も向かい側のソファで横になって、スマホゲームをしている男に頭を下げた。 先生と呼ばれるこの男、加瀬(かせ)隆成(りゅうせい)…… 『Escape The Criminal』で現在、9連覇中のチャンピオンだ。 元は検察官を務めていたのだが『刑事裁判撤廃法』により解雇され、現在は大学で法の歴史を教えていた。 一見、眼鏡をかけた平凡そうな優男に見えるが、銃の腕前はプロ級だ。 特にクレー射撃が得意中の得意で、高校時代はオリンピックに出れるのではとまで囁かれていた。 だが、その性格はちょっとひねくれていた。
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