第1話 嵐のような楽屋

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それにしても、これでよく降板にならないから不思議でしょうがない。 今夜も番組の行く末を左右する大問題を引き起こしたくせに、その張本人は反省の色を全く見せようとはしなかった。 それよりも、CMで流れた『幻影の化け物』を見て、思い出したかのように呟いた。 「これ明日のプレミアに呼ばれてるんだよね。行かなきゃ」 完全に俺たちを馬鹿にしていた。 しかし、当番組はこの男で成り立っているものだから中田プロデューサーも頭が上がらない。 普通なら叱るべきなのに、プロデューサーから怒りは伝わってこないのだ。 まぁ、結果的にアクセス数も良かったし、明日の視聴率(すうじ)も右肩上がりという予測が出ているので、結果オーライとみているのだろう。 だが、このままではいけないと承知している筈だ。 一応の対策としてはニューフェイスを起用するのが一番いい。 つまり、新たなチャンピオンだ。 血気盛んな挑戦者が古きチャンピオンに打ち勝ち、新たなチャンピオンの座を勝ち取る。 この戸川さんがそうなる予定だった。 だが、それを現チャンピョンが許すはずもなく、本戦前に徹底的に叩き潰した。 お得意のトラッシュ・トークでだ。 早くなにか別の対策を打たないといけなかった。
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