歌娘《うたひめ》

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 「作品を書くことによって、小説家自身が復活されなければならない。」 此れは誰だったか、三島由紀夫さんだったか……。これだけ出鱈目に情報が漂う世の中、どれが誰の言葉なのか、誰々がこう言っていた――と引用できないのは、世の中の所為(せい)かかもしれない。  上記の文句は、引用ではない――此処でも、情報に溺れる私が確認できる。上記の文句は、おそらく私が三島由紀夫さんの言葉を何かの動画で聞いて、其れを勝手に自分の言葉に変えたものである。  引用はできないが、こうして形を変え自分の頭の隅にあるということは、今の自分に少なからず影響を与えたものだろう。 このフィクション、事実を基底部とした虚構を書くにあたって、ふっと浮かんだ言葉が其れである。――要はそういうことである。
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