歌娘《うたひめ》

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 私達は中に入って直ぐの所で、チケットを買った。チケットを買ったと言っても、その後奥に行くとそれを切る人がいるわけでなく、その場で切られるため、只の客数のカウントくらいでしかなかった。チケットを渡す管理人は私達の顔を見るなり、 「おお、最近よーくるな。学校はいっとるか。さぼっとるんやろ。」 とからっかってきた。 「大学生はこんなもんすよ。」 「暇人ばかりですから。」  管理人はおそらく七〇代ぐらいの、おじいちゃんである。然しその内にあるエネルギーは、時々自分たちと同じくらいなのではないかと思わせる。さらに現代の世の中に通じている人で、先程大村に見せた、ライブをする予定者表や、そこに移る歌手やバンドの写真が載ったホームページは、驚くことに全てこのおじいちゃんが制作したものである。しかも中々使いやすく、その技術が分かる。  若者が集まる要因の大きなひとつには、こういった管理人の存在もある。エネルギーも考えも若々しく、さらに長年生きてきたことによる経験もあるため、みんなに慕われている。若者だらけの不安定な場には、こういった方の存在は大きい。正しい大人の力である。  おじちゃんと少し話してから、私達はゆっくりと奥へと入っていった。おじちゃん曰くハナバナさんは、今回が二回目のライブらしい。まだ高校生やけど、しっかりとした子やぞ、と自慢気な表情だった。
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