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小学生のとき、図画工作の授業で、先生に大きな声で叱られたことがある。
四年生くらいだったろうか。嫌だった時の記憶というのは、必然とぼんやりしているものだ。
でも、しっかりと何故叱られたのかはよく覚えている。
私は絵を描くことや何かを造ることが好きだった。生み出すということを子供ながらに楽しんでいた。
その日の図画工作の課題は読書感想画だった。私はゆったりとした文章で書かれていた本を読んで、ラストに主人公が夕焼けに向かって石を投げるシーンをイメージした。
だから赤い絵の具を画用紙いっぱいに撫でつけた。筆も使ったし、指でも塗りたくって、赤い絵の具のチューブの中身はほどんど空っぽになった。
でも、燃えるような夕焼けなんだろうから、赤色なんでしょう?
するとクラスメイトの机を巡回していた担任の先生が、大きな声で私を叱った。
「なんて勿体ないことするの。絵の具は少しずつ薄めて使いなさい! こんな絵、やり直し!」
周りのクラスメイトたちが驚いて私を見つめた。ひそひそと、「あんなに赤い絵の具ばかり使って、血みたいで怖い」「頭おかしいんじゃない?」と私のことを遠ざけた。
それ以来私は、絵を描くことも、赤色も嫌いになった。
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