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episode1
目覚ましが鳴る。
私は起きるとともに、カーテンを開ける。
エプロンをして、時計の音しかしない静かなキッチンで2人分の弁当を作る。
ハンバーグにほうれん草、きんぴらごぼうと卵焼き。
古臭いと娘の美佳は言うが、私はこういう料理しか作る事が出来ない。
弁当を作っていると、何も言わずに夫は起きてきて席に座る。
それを見て透かさず、電気ケトルでお湯を沸かす。
カチっとケトルが鳴ったら、旦那にコーヒーを出す。
夫はいつもコーヒーをすすりながら、新聞を読んでいる。
私と何も喋ることはなく、私が見えているのかすら怪しい。
目玉焼きとサラダとパンを、夫の目の前に出す。
『ありがとう』も『おはよう』もない。
もう結婚18年目。
美佳を産んでからというもの、会話がなくなってしまった。
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