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「藍一郎はこの事件にかかり切りになって、明莉は蒼生に預けられたんだ」
紅哉の声に萌子はハッと我に返った。
萌子にとってはひどく現実離れした話に、少しボーッとしていたらしい。
「明莉を家にひとりで置いておくわけにはいかないしな」
でも明莉にとって、母を殺されるという痛ましい事実は、目をそらせない現実である。
「じゃあ明莉ちゃんが学校に行けないのは、お母さんの事件のせい?」
紅哉は、
「ああ」
とうなずいた。
「詠さんに恨まれる理由がない以上、原因は刑事である藍一郎への逆恨みの可能性が捨てきれない。明莉も狙われていない保障はない」
コトは思ったより深刻だ。
萌子は、
「だから明莉ちゃんは付きまとわれているって言うんですね。まだ犯人が捕まっていないから」
母親を亡くした明莉を、これ以上の危険や苦しみにはさらすわけにはいかない。
だから蒼生は明莉のことを守っている。
そう考えれば理解できるが、
「それだけじゃない」
紅哉は再び、蒼生と明莉に目を戻した。
明莉はオロオロとした様子で、地面にひざまずいている蒼生を立たせようとしている。
紅哉は目を細めて、そんな明莉を見つめて、
「蒼生は、明莉の中に詠さんがいると思い込んでるんだ」
「……は?」
「だから蒼生は、詠さんの口から犯人のことを聞き出そうとしてる」
「へ!?」
萌子は頭が混乱してきた。
紅哉が何を言っているのか、よくわからない。
紅哉の言うことが理解できない。
明莉の中に詠がいる?
「???」
混乱しているところに、
「蒼生も詠さんのことが、ずっと好きだったんだ」
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