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萌子は、明莉の自宅を訪れていた。
あのすぐ後に、蒼生から頼まれたのだ。
「悪いんだけど、明莉が家の様子を見に行きたいらしい。この後付き合ってくれないか」
「私でいいの?」
思わず萌子が聞くと、蒼生の背中に隠れるように立っていた明莉はコクリとうなずく。
蒼生がそんな明莉に代わって、
「少し詠の部屋の整理がしたいらしい。でも詠の部屋には俺たちを入れたくないんだってさ」
明莉の家はこぢんまりとした一軒家で、辺りも閑静な住宅街だった。
中は綺麗に片付けられていて少しホッとしたが、玄関には厚手のコートがかかっていて、リビングにはホットカーペットが敷かれたままになっている。
家の中はまだ冬の気配だ。
おそらく、詠が死んでから半年間、手つかずだったのだろう。
それでも流し台には洗い桶にコップが入っていて、
「……」
そこでふと、明莉の父親の存在を思い出した。
詠を殺した犯人を追う、刑事だという藍一郎。
時々は帰って来ているのだろうか。
「お母さんの部屋はどこ?」
萌子が聞くと、明莉はそっと萌子の手を握った。
蒼生と紅哉をリビングに残して、ふたりで歩いていく。
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