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久しぶりに詠の部屋に入って、明莉はひどくナーバスになっている。
それは一緒にいてよくわかったから、紅哉のいうことに異論はないが、それでも明莉が何者かの影に怯えていることを、もう一度、ここにいるメンバーで話し合ってみた方がいいのではないだろうか。
紅哉は、蒼生を思いやった明莉の詐称だと言っていたが、藍一郎が、そのことについて、まったく触れようとしないのが気にかかる。
「私も付きまとわれてるんだ」
明莉は萌子にはっきりそう言った。
そこへ突然帰ってきた実白という男の存在。
その名前に倒れるほどショックを受けた明莉。
藍一郎は関係ないと決めつけているようだが、関連づけて考えない方がおかしいと思う。
もしや藍一郎は、明莉が感じている不穏な気配のことを知らないのではないか――。
「萌子」
いきなり呼ばれて萌子ははっとして顔をあげた。
蒼生が鍵束を投げ渡してくる。
「ここの鍵とReviveの鍵だ。店は自由に使ってくれていい」
「えっ」
「明莉を頼む」
言い置いて出て行ってしまった。
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