藍一郎

7/8
21人が本棚に入れています
本棚に追加
/72ページ
久しぶりに詠の部屋に入って、明莉はひどくナーバスになっている。 それは一緒にいてよくわかったから、紅哉のいうことに異論はないが、それでも明莉が何者かの影に怯えていることを、もう一度、ここにいるメンバーで話し合ってみた方がいいのではないだろうか。 紅哉は、蒼生を思いやった明莉の詐称だと言っていたが、藍一郎が、そのことについて、まったく触れようとしないのが気にかかる。 「私も付きまとわれてるんだ」 明莉は萌子にはっきりそう言った。 そこへ突然帰ってきた実白という男の存在。 その名前に倒れるほどショックを受けた明莉。 藍一郎は関係ないと決めつけているようだが、関連づけて考えない方がおかしいと思う。 もしや藍一郎は、明莉が感じている不穏な気配のことを知らないのではないか――。 「萌子」 いきなり呼ばれて萌子ははっとして顔をあげた。 蒼生が鍵束を投げ渡してくる。 「ここの鍵とReviveの鍵だ。店は自由に使ってくれていい」 「えっ」 「明莉を頼む」 言い置いて出て行ってしまった。
/72ページ

最初のコメントを投稿しよう!