藍一郎

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「……行っちゃった」 困り果てる萌子に紅哉は、 「放っとけ。腹が減ったら帰ってくる」 猫じゃあるまいしと萌子は思ったが、その前にふと漏らした。 「でもなんで蒼生さんは、明莉ちゃんが怯えてること、お兄さんに言わなかったんでしょう」 「……」 「その実白って男と今回の事件、本当に関係ないんでしょうか」 「まったく無関係とは思えないが、蒼生が認めない以上は口を挟めない」 やはり紅哉も同じことを考えていた。 「認めていない?」 「ああ、明莉の父親が藍一郎じゃない、なんてことは……」 当事者にとっては、大きすぎるショックだ。 だから蒼生は逃げ出すように行ってしまったのだろうか。 紅哉は、 「今となっては、もうヨミにしかわからない」 諦めたようにため息をついた。
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