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散々に暴れて、ふたりの息が切れるころになって、
「萌子さんの元彼って浮気したんですか?」
明莉がボソッと聞いてきた。
顔をあげる萌子に、
「あ、言いたくなければ別にいいんです。ただ、付きまとってくるほど好きだったのに、なんで浮気なんかするのかなと思って」
「好きってなんだろうって思うよ」
萌子は思い出すように虚空を見つめる。
「浮気じゃなくて、きっと私は最初から便利なだけの存在だったから」
月末になり金が無くなると決まって、和緑は萌子の部屋に泊まりにきた。
夕食も朝食も、当然のように萌子が振る舞う。
飲み会だ合宿だというたびに金を貸した。
一回一回にしたら、別にたいした金額ではないし、一万円単位ではちゃんと返してくれた。
だけど端数はダメだった。
千円二千円、数百円。
回数を重ねれば、それだけ萌子も負担に感じるし、家で振る舞う食事の費用はみんな萌子のサイフからだ。
しかし甘えてくる和緑をどうしても断れなくて、またそんな細かいことはなかなか言い出せなくて、もやもやした気持ちをずっと抱えていた。
そこに和緑の浮気が発覚した。
呆れたことに萌子に金を借りて、女の子を誘っていたのだ。
その彼女とどうなったのかなんて関係ない。
萌子は一体、和緑にとって何なのだと問いたいのだ。
「私のこと好きなのって聞くと好きって答える。別れたくないとも言う。だけど和緑自身を信じられないと気づいた時に、もう無理だってやっと思えたの。だけど全然聞いてくれなくて」
「それでストーカー」
「ええ、時間がたてば私が許すと思っているのよ。私は別に怒ってるわけじゃなくて、もうあなたとは付き合えないんだって何度も言ったのに、どうしても伝わらなかったの」
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