Revive

3/4
前へ
/72ページ
次へ
(みなみ)紅哉(こうや)は竹刀ケースでそいつの頭を横殴りにぶん殴る。 男は打撃をもろに食らって、なすすべもなく吹っ飛んだ。 「おいおい……」 後ろから呆れたように声をかけてきたのは、木津(きづ)蒼生(そうせい)だ。 「乱暴なヤツだな、そいつ死んじまうぞ」 紅哉の隣に並んで立てば、殴られて転んだ男はふたりの影の中に沈む。 「――ヒッ」 逃げ道を塞がれたことを悟って男は震え上がった。 紅哉は男を無表情な顔で見下ろして、 「こんなやつ、殺してやる価値もない」 冷たい声で言う。 「それに殺すつもりなら、これでぶった斬ってる」 ポンポンと手のひらで竹刀ケースをもてあそぶ顔は、それはそれは凶悪だ。 ケースの中に入っているのは本当に竹刀なのか? もしかしたら本物の日本刀ではないのか? 「ゆ、許して……」 慈悲を請うため縋るような目で見上げれば、ふと蒼生が隣にしゃがみ込んできた。 首を曲げ男の顔を覗き込むようにして、 「あいつは(こら)え性がないんだ」 ニッと笑う。 その人懐っこい笑顔に、少し胸をなで下ろした。 蒼生からは紅哉みたいな凶暴な雰囲気は感じられない。 もしかすると仲裁してくれるのではないか。自分は助かるのではないか。 そんな期待を抱かせた蒼生は、親指で紅哉を指しながら、 「だから、ちょっとあいつにさ――」 謝れと言われるなら、とっくにそのつもりだ。 土下座だってなんだってする。靴だって舐める。 慌てて座り直す男に、 「殺されといてよ」 笑顔のままで恐ろしいことを言う。
/72ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加