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「あの……、もうその辺で」
口を挟んだのは、長浜萌子だ。
「この人も、もう十分反省してると思うし」
一生懸命言ったのだが、紅哉にギロリと睨まれて、その恐ろしさに思わず首をすくめる。
しかし後ずさる萌子の背中をそっと支えてくれたのは、
「明莉ちゃん!」
木津明莉。
艶やかな黒髪が印象深い、大きな瞳の美少女。
蒼生の姪という関係だ。
だがまだ中学生でしかない彼女を、叔父が暴力を振るうような場所に同行させるなんて、どうかしてると思っていたのだが、
「――許してやれ、紅哉」
静かに告げる明莉の声はとても落ち着いている。
「これ以上はただの暴力だ。それにお前たち、ちょっと怖いぞ」
「――ヨミ!」
弾けるように叫んでこちらに駆け寄ってくる蒼生。
「来たのかヨミ」
明莉は最初からずっとその場にいたのに妙なことを言う。
そして、
「ヨミがそう言うなら、やめるよ」
いきなりその場にひざまずいて、明莉の手を両手で包むように握った。
「ヨミを怯えさせるつもりはないんだ」
一体何が始まったんだと、萌子は顔をしかめる。
紅哉も眉をしかめてこちらに近づいて来る。
なぜ、蒼生は明莉のことを『ヨミ』なんていう、妙なニックネームで呼ぶのだろう。
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