21人が本棚に入れています
本棚に追加
発端
ことの起こりは、萌子が『Revive』という店を偶然見つけたことだ。
Revive(復活)をうたうこの店は、簡単に言えばぶっ壊し屋。
もともとはアメリカ発祥の『物を壊してストレス解消』がコンセプトの、スペースの中にある物は何を壊してもかまわないという店だった。
まだまだ使えそうな家電や日用品を、辺り構わず破壊するという行為は、『イケないことをしている』という背徳感も相まって、これまで感じたことのない気分の高揚を味わうことが出来る。
そんなReviveで、荒れた思春期のようにバットを振り回した萌子に、
「お疲れさまでした」
当り前の顔をしてオシボリを渡してくれたのが明莉。
「えっ……」
最初受付をしてくれたのは、ボサボサの髪の、いかにも寝起きですといった顔をした蒼生だったはずなのに、出迎えてくれたのはまるで日本人形みたいな綺麗な女の子で、
安全管理のために部屋をモニターされていることは聞かされていたものの、こんな美少女に自分の醜態を見られていたのかと思うと、恥ずかしくて頬が赤くなる。
それでつい、
「あなた中学生でしょ。学校はどうしたの」
咎めるように言ってしまった。
「……」
しょんぼりと、うつむいてしまう少女。
「ごめん! 別に責めたいわけじゃないの」
萌子は焦って、体の前で手のひらを振った。
「あなた、この店のお手伝いをしているの?」
悪くなった雰囲気を変えようと、つとめて明るく尋ねる萌子に、
「ここは叔父の店なんです」
明莉はおずおずと答える。
この少女が学校に行っていなくても、別に教師でもない萌子が咎める資格はない。
それにこうやって身内の店を手伝い、社会と関わりを持っているのは立派なことだ。
迂闊なことを言ったと萌子は、
「ホントごめんね、最近私、変なヤツに付きまとわれてて、ちょっとイライラしてたんだ」
すると明莉は、
「ストーカーですか?」
思いがけず真剣な目をして聞き返してくる。
「え、そんな大層なものじゃないよ」
萌子は目を見開く。
「別にあいつだって悪人じゃないし。ただずっと付いてきて、うっとおしいだけだし」
最初のコメントを投稿しよう!