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そうして、紅哉と蒼生は萌子に付きまとっていた豊中和緑を追い払ってくれた。
乱暴な手段だが、萌子に文句を言うつもりはない。
これですべて解決というわけにはいかないが、少なくとも今夜だけは安心して眠ることができる。
傍らに立つ紅哉に、
「ありがとうございました」
萌子は礼を言うが、紅哉は、蒼生と明莉を見つめたままチラリとも萌子を見ようとはしなかった。
萌子も紅哉と一緒に手を握り合うふたりに視線を戻し、
「蒼生さんって、明莉ちゃんのこと溺愛って感じですか?」
冗談めかして聞いたら、
「――不愉快だ」
紅哉はきっぱり言い捨てる。
「……そんな風に言うことないじゃないですか」
思いがけぬ紅哉の強い口調に萌子が驚けば、
「姪として可愛がっているのなら文句はない。だが蒼生は――」
紅哉は少しためらう。
「じゃあやっぱり!」
萌子は、
「明莉ちゃんに付きまとってるストーカーって、蒼生さんなんですか!?」
紅哉はやっと萌子の顔を見下ろした。
そして、
「なるほど、そう見えるか」
ふうとため息をつく。
「蒼生の振る舞いは確かにさっきの男と変わらんが、別に明莉に付きまとっているわけではない」
そして紅哉は、
「蒼生がああなってしまったのには、ワケがあるんだ」
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