発端

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発端

ことの起こりは、萌子が『Revive』という店を偶然見つけたことだ。 Revive(復活)をうたうこの店は、簡単に言えばぶっ壊し屋。 もともとはアメリカ発祥の『物を壊してストレス解消』がコンセプトの、スペースの中にある物は何を壊してもかまわないという店だった。 まだまだ使えそうな家電や日用品を、辺り構わず破壊するという行為は、『イケないことをしている』という背徳感も相まって、これまで感じたことのない気分の高揚を味わうことが出来る。 そんなReviveで、荒れた思春期のようにバットを振り回した萌子に、 「お疲れさまでした」 当り前の顔をしてオシボリを渡してくれたのが明莉。 「えっ……」 最初受付をしてくれたのは、ボサボサの髪の、いかにも寝起きですといった顔をした蒼生だったはずなのに、出迎えてくれたのはまるで日本人形みたいな綺麗な女の子で、 安全管理のために部屋をモニターされていることは聞かされていたものの、こんな美少女に自分の醜態を見られていたのかと思うと、恥ずかしくて頬が赤くなる。 それでつい、 「あなた中学生でしょ。学校はどうしたの」 咎めるように言ってしまった。 「……」 しょんぼりと、うつむいてしまう少女。 「ごめん! 別に責めたいわけじゃないの」 萌子は焦って、体の前で手のひらを振った。 「あなた、この店のお手伝いをしているの?」 悪くなった雰囲気を変えようと、つとめて明るく尋ねる萌子に、 「ここは叔父の店なんです」 明莉はおずおずと答える。 この少女が学校に行っていなくても、別に教師でもない萌子が咎める資格はない。 それにこうやって身内の店を手伝い、社会と関わりを持っているのは立派なことだ。 迂闊なことを言ったと萌子は、 「ホントごめんね、最近私、変なヤツに付きまとわれてて、ちょっとイライラしてたんだ」 すると明莉は、 「ストーカーですか?」 思いがけず真剣な目をして聞き返してくる。 「え、そんな大層なものじゃないよ」 萌子は目を見開く。 「別にあいつだって悪人じゃないし。ただずっと付いてきて、うっとおしいだけだし」
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