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『そんな昔の事…何とも思ってないよ』
『じゃあ何で泣いてんの?』
………え
泣いてる………?
思わず手を頬に当てると湿った頬に、お風呂のお湯とは違う濡れた感覚があった。
『令……好きだよ。ずっと好き……好きなんだ』
わかってる……
……卑怯な手を使ってでも
そんなにも俺を好きな気持ちも。
わかってるんだ。でも……。
胸がキュッと音をたてる。
………俺は瑠衣の方を向き、初めて瑠衣の背中に腕を回した。胸に額をくっ付けると……瑠衣が驚いたように固まる。
『令………?』
『早く…好きにならせて』
もう………今はこの苦しい気持ちも、誰かを断ち切りたい気持ちも、すべて。瑠衣にぶつけるしかなかった。
………俺が瑠衣から逃げたら、瑠衣は俺がせっかく守ったモノを汚すんだろ?だから逃げない。アイツさえ幸せだったら……俺は瑠衣から逃げない。
だから早く……好きにならせて。
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