遺骨

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遺骨

 からんと、音がする。また、からんと音がする。  穏やかな日々は続かないもので、僕は今まさにその穏やかな日々の終わりに直面していた。  また、からんと音がする。  茜さんのご主人が亡くなった。その遺骨が入った骨壺から、カランという音は響いているのだ。茜さんが骨壺をゆらすたび、骨壺から乾いた音が鳴り響く。 「これが、私が待ってた人だって……」  茜さんが小さく言う。彼女の手には、小さな白いサンゴ礁の塊が握られていた。それが、茜さんの旦那さんの『遺骨』らしい。他に遺品らしきものはなにも送られてこなかったという。葬式はどうすると、坂井さんが茜さんに尋ねてくる。  茜さんは弱々しく笑って、一晩だけ休ませてくださいと坂井さんに頭を下げた。  その日の夜に事件は起きたのだ。
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