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回想のプロローグ
引っ越しの荷物が片付いてしまった部屋は、がらんとして案外広く見えた。
始めもそうだったろうか。
床に座って一服する。
極細のメンソール。
吐き出した煙にむせ返り、咳込んで息苦しい。
もうすぐ一年になる。
篠さん、貴方が突然に逝ってしまってから…。
あまりに突然で、俺は貴方の死を受け入れることが出来ずにいました。
漸く、本当に漸く、次へのスタートを切る決心がついた処です。
本当はね、篠さん、
貴方から受け取ったもの、
貴方の遺してくれたものを大切に、
次へと繋いで行こう。って。
そんな風にも思っていました。
きっと、走る馬にも鞭だって、笑って言うと思うから。
でも、存在はあまりに大きくて、押し潰されてしまう。
此処に居て、篠さんを思い出さない時はないのです。
追い掛ける人を見失ったのに、走り続けるのは、苦しい。
どうしようもなく、苦しい。
篠さんが悪い。
俺を置いて逝ってしまった、
篠さんが悪い…。
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