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「遥さん、遅くないですか?」
俺の心情を読んだように真由ちゃんが口にしたのは遥さんが出て行ってから一時間ほどが経った頃。
新しい事務所に行き、段ボールを降ろし、おやつを買ってくる。
それだけにしては遅い。
「俺、ちょっと見てきます」
そう言って腰を上げた俺に真由ちゃんが笑みを返した時、事務所のドアのロック解除音が鳴った。
「ただいま〜」
呑気な声で言いながら遥さんが入ってくる。その後ろに背の高い人影。
「あ、今日挨拶に来るって言ってた新人くん。間違えて新しい事務所の方に来てたから連れてきた」
「初めまして」
頭を下げつつそう言った彼が遥さんの後ろから出てくる。
「柏木眞人と言います。よろしくお願いします」
人懐っこい笑顔で若い彼が挨拶をする。
柔らかい笑顔で遥さんを見下ろす彼を見て、嫌な予感に腹の奥がざわりとざわめいた気がした………
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