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結奈はふぅっと息を吐き出して、気持ちを切り替え、玲子を見つめる。それに玲子はにこっと笑って、今まで表にでていた感情を消す。
「玲子さん。いろいろとありがとうございました。お代はいくらですか?」
「明確な金額は決めてないわ。あなたの〝お気持ち〞ってやつでいいわ」
「え、えっとじゃあ」
結奈は財布から、三万円を取り出し、玲子に差し出す。
「私の運命の相手を教えてくれたことを考えると、少ないかもしれないですけど……」
「言ったでしょう。〝お気持ち〞でいいって」
玲子は煙草盆にある引き出しの中に、お金をしまった。
結奈は立ち上がって、玲子に頭を下げる。
「本当にありがとうございました!」
「幸せになれるといいわね」
玲子はひらひらと、手を振って結奈を見送った。
「……本当に、幸せになれるといいわね」
繁華街へと消えていく結奈の背に、そう玲子は呟いた。
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