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 すると玲子がテーブルの上においてあった小さな箱の蓋を開け、なにかを取り出すと結奈に差し出す。  訳がわからないまま手を出すと、ぽとりと透明なビー玉を落とされた。 「それをかざして、道行く人を見てごらんなさい」  結奈は言われた通り、ビー玉越しに逆さまの世界を見る。するととおりを歩く彼ら彼女らの右手の小指に、赤い糸が見えた。  結奈は慌ててビー玉を、目から離す。裸眼で見ても、赤い糸はなかった。再び見ると、赤い糸が。中には複雑に絡み合っているものもある。その時、目の前を歩いていた男女がぶつかった。 「あ! ごめんなさい!」 「いや、こっちこそ。あれ?もしかして」 「え? わぁ! 久しぶり!」  懐かしそうに会話を始めた二人。すると今までヒラヒラと漂っていた彼らの赤い糸が、きゅっと結ばれた。  そのまま男女は、並んで人混みのなかに消えていく。
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