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 結奈はきゅっと、膝の上に乗せた手を握りしめる。 「納得できなくて、彼の後を追いかけたんです。そうしたら、私の知らない女の人と腕を組んで、すごく仲良さそうで……。彼、私のこと「知らない」って」 「こんなこといったら、あなたは余計に傷つくかもしれないけど、社会人になったことで出会いができたってことよ。あなたにもそういう出会いが、これから待ってるかもしれないわ」 「でも!」  結奈は机に手をついて、身を乗り出す。 「私には誠しかいないんです! ずっと一緒にいて、卒業して落ち着いたら同棲して、いつか結婚しようねって、誠は言ってくれたんです!」 「でも、実際はそうじゃなかった」  結奈は、ストンと力が抜けたように座り込んだ。 「私、遊ばれていたんです」 「よかったじゃない。先にわかって。そういう男と結婚しても、ロクな目に遭わないわよ」 「でも……私には誠だけだったのに。信じてたのに」  そう呟いて、結奈は顔を覆う。玲子はなにも言わず、ただ煙管を吹かすだけ。
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