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赤くただれたやつがついてくる。
後ろじゃなくて常に前方、左斜め前。
なんだかどろどろした燃えかすが集まっていて、子供の頭一個分くらいの大きさだ。ちょっと焦げ臭いけど別に悪さしてくるわけじゃない。
でも、とにかく邪魔だ。
小さくため息を吐く。バスの窓際に座っていてもそいつはやはり左斜め前に固定されている。じっと見ると後ろの電柱が見えなくはないが、一緒にそいつのパーツまで見えてくる。あれは、小学生の時誕生日プレゼントにお母さんがくれたウサギのぬいぐるみだ。片耳はなくなって体の三分の二は焼けただれていてなんだかどろどろにくずれていた。気持ち悪い。
やっぱり、見なきゃよかった。
停留所で降りて、そこから家までの道のりがけっこう長い。
急な坂道を何度か上って、周りの景色がみかん畑と山の木々だけになってくるといよいよわが家が見えてくる。石垣で囲ってはいるが、薄ピンクの壁にオレンジ色の屋根は周りの景色からあきらかに浮いて見える。
この坂の上にはおとしよりが住んでいる家が二、三軒あるだけだ。
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