【放課後、○○高校多目的室にて】

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【放課後、○○高校多目的室にて】

 ――コンコン。  失礼します。  すみません、お忙しいのに時間を作っていただきまして。  娘の茉莉香のことですが……。  ええ、ええ、そうです。その件に関しましては大変申し訳ございませんでした。まさか、家でだけではなく学校で、ましてやお友達の大川さんにケガをさせてしまうなんて。 こんなことは初めてで、もう本当に何と言ったらよいか。……全て私の責任です。  跡が残るような怪我にならなくて本当によかったです。  え? いじめですか? それはないと思うのですが、お恥ずかしながらもうずっと娘と話をしてなくて。いえ、喧嘩なんてしていません。むしろその方がどんなによいか。あっ、申し訳ございません、私情を挟んでしまって。え、もっと話してほしい、そう言われましても……。  もえぞこない? 茉莉香が大川さんにそう言ったのですか。ああ、でしたら話しましょう。    あの子が小さい時から私と主人は夜遅くまで働いていて、私達よりも一緒にいる時間の長いお義父さんに茉莉香はべったりなついていました。  お義母さんは物置で探し物をしている時、嫁入り道具で持ってきた古いタンスに押しつぶされて亡くなられたのですが、それからお義父さんは何でも使わないものは燃やすようになりました。中のものは処分しましたが、いまだに残している物置も本当は燃やしたいのか、いつも物置小屋にアウトドアで使うようなチャッカマンと充填用のガスが置いてあります。  生ごみでも何でもお義父さんは庭で燃やします。いくら近所の家まで離れていて苦情が来ないからといっても煙は体に悪いですし、洗濯物に臭いがついてしまうのが私は嫌で、少し遠いですが坂の下のゴミ収集所までお義父さんが燃やす前になるべく持って行っています。  ああ、もえぞこないの話でしたね。私もよくは分かってないのですが、一度燃やしたものの残りかすみたいなものだとお義父さんは言っていました。燃えきれなかったものは器が消えても中のエネルギーみたいなものだけ残って、それを一番思っている人についてくるとかなんとか。きっと大川さんとの何かを燃やしたから、そんなこと言ったのでしょうね。  ふふ、そんな顔されなくて大丈夫ですよ。観念的過ぎて私もあまりこういう話得意ではないのです。……それでも、茉莉香は信じたみたいです。
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