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家に入ってじいちゃんの姿を探す。玄関の鍵は開いていたから畑かな、そう思っていたらキッチン奥の裏口のドアが勢いよく開いた。首に白い手ぬぐいを巻いたじいちゃんがひょっこり顔を出していた。
「おかえり、今燃やしとるけどなんかあるね?」
「あー、……ある」
急いで二階の自分の部屋へ行き、もっていた学生カバンをベッドの上に置く。机のそばの引き出しつきの収納ボックス。それの二段目と三段目。取手を引っ張り、中のものを近くにあった本屋の袋に詰め込んでいく。
中学からだから約三年ちょっと。昨日まで友達だった子達とのプリクラとやり取りした手紙の数々。もういらない。
結局、一袋に入りきらなくて三袋も使ってしまった。手紙の中には授業中に回していたシリトリもあって、なんだか恥ずかしくなった。
階段を降りるとき、赤いやつが邪魔で下に置いてあった掃除機に直前まで気づかず転びかけた。どうやら少しずつ、移動しているらしい。さっきまで斜め前だったのに今ではもう左前にいる。
庭ではじいちゃんがどこで拾ったか分からない長い木の棒を使ってわが家の焼却場で燃やしていた。わが家といっても、じいちゃんしか使わない。よく見ると、黒っぽい炎の奥に竹筒のようなものが見えた。
「もしかして、じいちゃん竹の貯金箱捨てた?」
小学校の時自由研究で一緒に作った物だ。じいちゃんが竹を切ってくれてそれに私がボンドでビーズとかを接着して、見栄えは悪かったけど頑張って作って、じいちゃんも出来上がったとき喜んでくれた記憶がある。
じいちゃんはあの時と同じくにこにこ笑っていた。
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