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「下駄箱の上に置いてあって危なかったけんなあ、まあ使わんものとっといてもしょうがないけん。それより、燃やすならここにいれなっせ」
棒でゴミをかき分けて作ってくれたスペースに、持ってきた三袋を入れる。ビニールが黒い炎に溶かされて、出てきたプリクラや手紙がゆっくり燃えていく。
危なかったのなら仕方ないな、確かに使わないし。
明らかに、体に悪そうな黒い煙が立ち昇っていく。顔にあたる熱に目を細めながら、仲が良かった友達と一緒に溶けていく自分の顔を見つめた。ふつふつと湧いていたやり場のない気持ちに、勢いよく冷水をかけられたような気持ちだった。清々しいとはかけ離れているけど、なんだかぐちゃぐちゃしている中に空いた少しの消失感はとても心地よかった。
「じいちゃん、またついてくるようになったんだけど」
いつから、とじいちゃんは言った。
「今日、学校が終わってから。前のは左斜め下だったけど今回は左前らへん」
「そうかい、形は燃やしてもどうしても残ってしまうとたいなあ。今はきついかもしれんけど、そのうち前みたいに消えるけん大丈夫。ただの残りかすだけん」
大丈夫大丈夫、と繰り返しながらじいちゃんはバケツに水を汲んで、燃やし終わったゴミにかけた。まだ出ていた煙が左前の赤いやつに吸収されていったように見え、焦げ臭さが増した。前の時は確かに数日で消えたけど、今回のよりもっとずっと小さかった気がする。小学生の時だったからはっきりとは思い出せない。
「前さ、じいちゃんも一回だけ見たことあるって言ってたけど、あれからもう見てないの?」
じいちゃんは白髪の混じった眉毛を少し寄せた。
「見とらんなぁ、ばあちゃん亡くなって物置のごちゃごちゃ全部燃やした時に一回見たっきりばい」
そうか、二回も来たのは私だけか。
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