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はじめに
キリスト歴4017年、人類が後に災厄と称される事象によって大地を失って何世紀もた経った頃、人は文明や文化、大地や自然といったものを殆ど失って細々と暮らしていた。
これは私たち放浪者や観測者といった種族も例外ではない。
放浪者とはひとつの場所にいつくことなく宛もなく旅を続けて日々を生きる人々のことを指し、観測者とは自分の生涯をかけて、この地球の現状を観測し、歴史を記し紡いでいく人々のことである。私たちは放浪者でありながら観測者でもある。
これから、私たちが観測した中でおそらく災厄以降最も歴史的な体験をしたので、ここに記そうと思う。
その前に、災厄について触れておかなければならない。この、人類を滅亡へ追い込み、地球そのものを全く別の星そのものに変えてしまった災厄は、キリスト歴2500年頃に起こったとされている。
現在――キリスト歴4017年では、当時の文献やその他の記録はほとんど残っておらず、私たちのような観測者を含め、歴史を未来へと伝えた人達の僅かな情報しかなく、明確な災厄の記録は残ってはいないが、それでも旅をする中で手に入れた貴重な資料の殆どは災厄についてのものであった。
私たちはこれはまで様々な情報媒体を入手してきたが、その殆どが記憶媒体によるデータ化されたものであり、そこには噂程度のものから過去に災厄について研究していた人のものであろう資料まで様々であった。
それらの情報に記録されている災厄についてのデータには、科学技術による弊害、地球規模の超常現象、地球外生命体による侵略、そして神による人類への神罰といった宗教的なものまで記録されており、最早情報の整合性をとることは不可能とされていたが、全てのデータに"角人"についての記載が存在することが唯一の共通点であった。
角人とは、文字どおり額に2本の角のような突起物のある生命体であり、私たち人類を滅亡寸前まで追い込んだ種族である。詰まるところ、人類の明確な敵であり、人類からこの星の所有権を根こそぎもぎ取った種族である。
これまで角人は、宇宙人や突然変異種とされており、災厄も彼ら角人によって引き起こされたものであると推測される。
ここまで長々と災厄についての記述を書き連ねてしまい申し訳ない。
申し遅れてしまっだが、私はサラという。観測者の中でも近年は珍しい女性調査員をやらせてもらっている。調査員とは危険を冒して資料を探すため角人との接触・戦闘も多く、殉職率も高い。だが私は、両親が残した角人調査をどうしても引き継ぎたく思い、一族の反対を押し切り調査員になった。調査中に角人によって殺された両親の意思を継ぎ、角人からこの星を奪い返したい、その思いが私をつき動かしているのだろう。
これからここに記す内容は、私の観測者としての調査の全てとも言える。
後にこの記録を目にした者が、ほんの少しでも何かの役に立ててくれるとありがたい。
では本題に入ろう。
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