サラによる福音書 第一章

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 これはほんの一瞬。僅か数分程度の邂逅(かいこう)であった。  「サラ!ここは危険だ。引き返す。」  そう言ったのは調査員の(おさ)であるロックだ。私は瓦礫によって通行すら困難な廃墟の一室での調査の手を止めロックの方を向いた。  「瓦礫のことなら心配ないよ。足場こそ危ないけどこの建物は超硬属物製だから、崩れる心配はないと思う。」  そう言って私は瓦礫の山から軽く飛び降り、体の埃を払った。  「そうじゃない。この建物周辺の瓦礫の破片がまだ新しい。角人との戦闘があった可能性がある。」  「なら尚更じゃない!周辺に生き残った人がいるかもしれないでしょ!探さないと!」  ロックは顎の髭を書きながら少し考えたが、すぐに  「いや、駄目だ。生存者を救出するにも、1度皆の所へ戻る必要がある。人手も道具も足りない。それに万が一角人と戦闘になった場合、俺とお前2人じゃ切り抜けることはとても困難だ。引き返そう。」  こう言われては返す言葉もない。渋々荷物をまとめ、瓦礫を踏みつけながらロックの元へ向かう。その時、別の瓦礫に右足で踏み込んだ地面が、足ごと下へめり込んだ。私はバランスを崩し、その場で倒れそうになった。が、直後私の周辺半径1m程の地面が一気に崩壊した。  「サラ!」 ロックの叫び声と同時に激しい崩壊音を立てて地面が割れ、私はそこに吸い込まれていく。  「まさか......っ!ここ、元々空洞だったの!?」 地面の下、地下階層へと繋がる大穴に瓦礫の山がおおい被さってしまい、気が付かなかった。さっき飛び降りた時の衝撃で保っていたバランスが崩れ、崩壊してしまったのだろう。  そのままなす術なく、瓦礫とともに私は地下階層へと落ちていった。
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