真相ー裏ー

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真相ー裏ー

初めて会った隣人はとても綺麗だと思った 両親から日々虐待を受けて、ヒステリックな女や暴力的な体格のいい男が嫌いだった俺は中学生の頃から、綺麗な男が恋愛対象になっていたのだ。 そして、初めて本気で恋をして欲しいと思ったのは隣の家に住む日野さんという人だった。近所のおばさん達の話だとどうやら医者をしているらしく、天才外科医ともてはやされてるらしい 容姿も美しく、儚いとすら思えるので無愛想でなければ息子に欲しいとさえ言われていた 今の俺じゃあの人を手に入れることは出来ない 相手にすらしてもらえないだろう 初めて会った時は、いつものように関わるなと忠告するつもりで睨んでしまったから印象も最悪なのに、どうしたものか。きっと大人になってもあの人の所へ行くのは難しい ならばこちらに堕ちてきてもらえないかな 家に帰ると鼻につく異様に強い灯油の匂いがした。ぞわり、と背中に嫌な空気が走り鞄を投げ捨ててそのままリビングへ駆け出した そして、目に入ったのは転がった2つのコップと刺された両親、そして自分を唯一庇ってくれる兄だった。 なんでどうして そう思ったが答えは明白だった。俺を救ってくれたのだ、この絶望から 兄ちゃんと何度も叫んだ。色々なものが落ちて、本棚が崩れた際に腹部に火傷をおっても叫び続けた 両親は大嫌いだからどうせならこのまま焼死して欲しい、けれど兄ちゃんは救いたかった。けれど兄ちゃんは動きそうにない、絶望しかけたその時声をかけてくれて部屋に入ってきたのは日野さんだった 絶対にもう逃げたと思っていたのに、日野さんが助けに来てくれた、そのことだけで笑みが零れそうでたまらない、ああダメだ堪えなきゃ 不謹慎と分かっていても心が満たされいく 痛かったはずの腹部より心臓の痛みを感じた 嬉しい!嬉しい!嬉しい! 兄ちゃんの日野さんは、俺が感情を抑えるのに必死な間に何かを決めたようだった そして、兄ちゃんにろくに挨拶も出来ないまま俺は日野さんに抱えられて家から出てしまう さすがに抵抗した、兄は何も悪くないのだから それでも、日野さんは走り続けて、そして「ごめん」と酷く苦しそうな顔で呟いた。絶望と後悔に苛まれた顔でけれどなにかを決意した顔で この時、俺は兄を見捨ててるというのに頭の中は酷く冷静だった。冷静に、日野さんをこちらに引きずり込む手段を思いついていた ああ、簡単じゃないか その後悔を利用すればいい そう作戦を思いついて、日野さんに分からないように口角をあげて笑った。 そして、思ったより煙が回っていたらしく次に起きた時は病院だった 「…っ、ん?」 「先生!謙也くん、目覚めました!」 起きた時には、色々な機会と人に囲まれていた なにもかも想定通りだ 「謙也くん、よく頑張ったね!」 看護師がマスクをしてても分かるように笑っていた、安心したのだろう。ああ、でも日野さんが心配だ、早く会いたい、早く会いたいから始めないと 「に、いさんは?一緒にふた、りでにげてきたのに…ど、うして居ないの?俺をだ、っこしてたでしょう?」 思ったより喉がからからで声は出なかったがはっきりと伝えられたらしい、笑っていた看護師の顔がすぐに今にも泣きだしそうな顔になった 俺がどう誤解しているのか察したのだろう 兄ちゃん、大好きだよ 俺を助けてくれてありがとう。しばらくはいけないけど必ずお墓参りするね 日野さん…ううん、兄さん。初めまして 愛しています、これからはずっと一緒に居てください
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