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これ以上、自分との距離を縮めないで欲しい。
ファブリスは、ただ、剣を教わるだけの存在であり、シリルはドニの友達であり自分には関係ない。
それなのに心の中へと入り込もうとするファブリスにロシェは困惑していた。
火傷跡に目をそらさずに触れてきたのは、ドニ以外で彼だけだ。思えばシリルも特に気にしている様子はない。
「調子が狂う」
唇が触れた箇所が熱くてしかたがない。
二人の食生活はドニが育てた野菜と森で狩った鳥や小物の獣、木の実などだ。
ドニはあまり肉が好きではなく、野菜ばかりで食が薄い。それゆえか身体は痩せている。
だが、この頃はファブリスの作った菓子を食べているので身体重が増えた。
それでも痩せすぎだとファブリスは肉をどうにか食わせようと試行錯誤をしているようで、たまに肉や魚のパイを焼く。
包丁で細かく叩いて野菜や果物を混ぜたパイはドニも喜んで食べていた。
まぁ、ドニと二人の食事はただ焼いて味付けに塩を振るうくらいだから、手の込んだ手料理を食べさせてもらった時には感動したものだ。
「ファブリスが奥さんだったら幸せだろうなぁ」
その言葉になぜかドキッとした。
「はは、ドニは面白いことを言うな」
楽しそうに笑うファブリスに、ムカついて舌打ちをする。
周りがシンとなるのは、それが思いのほか大きかったからだろう。
「あ、本気で言っているんじゃないよ?」
「当たり前だ。獣人を嫁に貰うとか、あほか」
「……そうじゃないんだけどなぁ」
ならどういう意味だ。
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