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性急すぎる恋
この頃、甘いものでつろうとしていないだろうか。
その手についのってしまうのは、ファブリスが作る物が美味いからだ。
バタークリームは特に気に入った。ドニも顔をトロンとさせながらケーキを味わっていた。
もしかしたら自分もあんな表情をしているのだろうか。だとしたら恥ずかしい。
「二人ともすっかり気に入ったようだな」
「うん。すごく美味しい。ね、ロシェ」
「そうだな」
眉間にシワを寄せていれば、ドニの指がそこを押した。
「ほら、素直に美味しいって顔をしなよ。あ、もしかしてファブリスに見せたくないの?」
「うるさい。黙って食え」
「いつもはそんな事を言わないのに」
更に睨みつけると、ドニは意味ありげに含み笑いをし、シリルと話し始める。
「ロシェ、気に入らないんだろうか?」
そういうんじゃ……」
素直な性格をしていないので、美味いと褒める事も出来なくて口ごもる。
「そうか」
何故か嬉しそうに眼を細めているファブリスに、フンと鼻を鳴らして顔を背けた。
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