君に恋している

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君に恋している

<ファブリス>  おもわず口からでた言葉に、自分自身でも驚いた。  美味しそうなのはロシェのことで、全てを食べてしまいたいという想いが声となって飛び出してしまった。  それは伝わることなく、自画自賛という言葉で返されて、がっかりとしてしまう自分が居た。  こんな気持ちになるのは初めてだ。もっと彼を知りたいとは思っていたが、そういう意味で興味を持つなんて思わなかった。  強くなりたいという気持ちが伝わってくる。一生懸命に学ぶ姿は好ましく、教える方にも熱が上がる。  オヤツをだすようになってから少し太ったし、剣の腕も以前に比べたら良くなった。スタミナもついてきて、今までは向こうから休憩をしたいと言っていたが、適当な所でファブリスの方から休憩を申し入れる。 「ロシェ、休憩だ」  木陰で、タオルで汗をぬぐっているロシェに冷たい果実水をコップに注ぎ手渡せば、それを美味そうに喉を鳴らしながら飲み干す。 「少し酸味があるんだな」 「あぁ、レモラの実のしぼり汁を入れた。さっぱりしているのもいいだろう?」  レモラの実は橙色の皮でおおわれていて中は薄い黄色。酸味があるためにそのままで食べることはしない。  それのしぼり汁をゼリーに使ったり、脂っこい食事と一緒に出したりする。他には皮ごと輪切りにして蜂蜜に漬けたり、皮だけを煮てジャムにしたりと、調味料替わりや料理のワンポイントに、はたまたおやつにまでなるレモラの実は重宝されている。  母が果実園を作りそこで実ったもので、休みの日に父親と収穫祭を楽しんだのだと、手紙と共に送ってくれた。いつまでも仲のいい夫婦だ。 「レモラの実か。これ、好きだ」  ファブリスのことを言っている訳ではないのに、好きと言う言葉に反応して胸が高鳴り、これは重症かもしれないなと苦笑いを浮かべた。 ※レモラの実…味も形もレモン。皮の色はオレンジ色
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