ファブリスとロシェ

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ファブリスとロシェ

<ファブリス>  シリルは昔から毛並のことで辛い思いをしてきた。  家族の愛情を与えられずに一人、大きな館に住まわされ、伴は自分一人だけ。  それもシリルは自分に対して負い目を感じている。  ファブリスには騎士として優秀で、隊長への話もでていた。だが、それよりも大切な理由があり、シリルが弟のように可愛いのだ。  彼が悲しい思いをしながら暮らす姿を見ていると辛い。  笑顔を見せて欲しい。  だから、ドニとロシェと出会った時、怪我をしていたシリルを助けてくれた二人に、良い友達になってもらえないかと思い屋敷へと誘った。  ドニは元々、獣人に友好的であり、すぐにシリルとも仲良くなった。  ロシェには剣術を教えるということになり、シリルだけではなくファブリスにまで楽しみが増えた。  しかも二人はとても優しくて良い人だ。シリルのコンプレックスである毛並の悪さを良くしてくれようと、危険な場所に出向いてケア用のオイルを作ってくれた。  四人でお茶をする時は、必ず話の中心はドニとなり、シリルをよく笑わせてくれる。  たまに息は荒くなるし、涎を垂らしそうになるが、まぁ、シリルが楽しそうなのでと気にしないようにしている。  ロシェとは剣術のこと以外であまり話すことはなかった。だが、回数を重ねていくごとに少しずつ距離が近づいてたと思う。
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