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26
ーー思い出したのは突然だった。
俺はそれまで普通の大学生で、特に何もないまま就職して上手く行けば結婚とかできるかなって、それくらいの人生計画。
しかしそれはとある少女の登場によって憚られる。彼女は猫谷儚日と名乗った。アニキと会話する彼女のビジョンといつかの夢の内容が交差する。デジャヴ、というのが正しいか。かつて俺はその光景を見たことがあった。うんと昔だ。俺が〝夕島蓮〟である前、〝ハンス・トワイライト〟の時。
『お前、フローレンス・ラグドールだろ?』
追いつけない状況に思わず彼女に聞いてしまった。動揺してはいたが彼女は俺に色々なことを話してくれた。
「いったい、どうなってんだよ。乙女ゲームってそもそも何だし。」
ベッドに寝っ転がる。入ってくる情報が何せ多すぎる。携帯の欄に猫谷儚日、その文字が追加されている。アニキと一緒に火の海の中で永遠の眠りについた彼女は、俺やかつての知り合いを見て何を思っているのだろう。高校生という枠に収まりながらかつての気高さを失っていなかった少女に俺はタジタジだ。とりあえず言われたゲームをスマホで検索する。
「普通あそこは一万出しとくべきだったよなぁ。いや、今考えてもなあ。」
前世の俺はローゼという女の付き人をしていた。護衛騎士かなんだったか。まあどっちでもいいのだが、とにかくあの女はいけ好かない奴だった。何事も有耶無耶で本心を絶対に現さないような気味の悪い奴だ。ホームページが開いて目に入ったのはいかにもアニメって感じのアニキの姿。うん、でもこれアニキだな。
「ん?…恋王国、ちっローゼが主人公なのかよ!!なんだよこのゲームやってられっか!ええ、俺いるじゃん。これ俺じゃん。なんかかっこよくなってるじゃん。」
そいつと王子のせいでアニキと彼女は命を落としたが、逆にあそこまでの二人の絆の深さに酷く嫉妬していたのを覚えている。俺とローゼはそんなものは皆無だったのだから。アニキの誕生日パーティの時に遠目で見た彼女はとても優しい瞳をしていて、
ーーそう、そうだった。
懐古すれば思い出してしまうと思わなかったのか?いや、そんなこと考えられるほど自分の頭は良くない。
「…一目惚れだったんだ。」
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