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7
なぜだろう。
「騙すようなことしちゃってごめんね猫谷さん?」
何故私はこんな状況に陥っているのだろう…
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昨日はそのまま輝也の車でメックを食べながら帰った。一日がうんと長く感じた。そして今日何か言われるかと思ったが、運良く茗荷谷と出会うことはなかった。教室に入ると既に灯も楓もいた。
「ああ!はーちゃん!!よかったぁおはよう。大丈夫だった?」
灯が勢いよく抱きついてくる。
「ごめんね心配かけちゃって…楓も。」
「おうよ、音ノ木はしっかり俺が守っといたぜ。今度しっかりみんなで遊びに行こうな。輝也からの説教にはもううんざりだから、今度からは茗荷谷の誘いにはぜってえ乗らねえけど。」
輝也さん、楓に連絡してくれてたんだ…。前世のラフテルの頃からしっかり者で私を守ってくれていたがそれは現世でも健在のようだ。
「うんうん、もうやめよう。なんか会長さん?と会って、一応一緒に探してはくれたんだけど、少し怖い感じの人だったし。もう関わるのはいいかなって思うよ。」
「会長って生徒会長のこと?」
うちの学校の生徒会は暗黙の了解だが名家揃いのぼっちゃん嬢ちゃんだらけで謎めいている。茗荷谷やほか何人かは顔が整っている上にフランクなところもあるから比較的みんなからの受けはいいが…会長は絶対に表に出てきたことはない、気がする。
「茗荷谷によればお前に会ったらしいけど?」
一人だけ確かに心当たりがある。
「もしかして…溶定。」
「何、知り合いだった?」
知り合いも何も私を殺してきた男ですーって言ってもねえ。この学校にいるのか、しんどいしんどい。
「全然、本当のこというとその人がすごい変わった人で…そこを輝也さんが助けてくれたんだ。」
うん、事実を言った。
「さっすが輝也さんだね!どっかの誰かさんとは違って。」
「んがっ!うるせえよ。」
そんな他愛もない会話をしながら今日も今日とて何も起こらず、特に委員の仕事もないのでそそくさと退散する気であった。気であったのだ。…先生に呼ばれるまでは。「放課後、2-Aの教室にいるように。」だなんて、最初からおかしいと考えればよかった。教室に入るとさも当たりまえかのように男子生徒二人はいた。
「やあ猫谷さん。」
「やっと来たか…。」
とてつもなく顔が良く、地位も高いこの二人はこの笑顔で前世でも現世でも一体何人の女性を落としてきたというのだろうか。
「なぜ、お二人がここにいるんです?」
私は冷静になって答える。先生の呼び出しだったのでいつも助けてくれる灯も楓も帰ってしまっていた。
「いや猫谷さん昨日帰っちゃったでしょ?実は昨日話したかったことがあったんだけど話せなくて。」
「先生の力を借りて呼んでもらったわけだ。」
いやいやいやいや、私は話すこと何もないんですけども。溶定は昨日はいきなりだったので足がすくんでしまったが、よくよく考えてみると怖いとかいうよりも理不尽な殺され方による怒りの方が勝り、もう今は目の前にいようがなんとも思わない。
「昨日のことは申し訳ありませんでした。少し具合が悪くなってしまって。」
「知ってる知ってる。遊里から聞いてたし。今日は元気そうでよかったよ。まあとりあえず座って?」
半ば無理やり座らせられると二人に横に挟まれてしまった。これは中々帰るのは難しいかもしれない。わざわざ茗荷谷が机に手を置き、私の耳元で話す。
「…でね、猫谷さんにしたかった話、なんだけど。ここだけの内緒の話にしてほしいんだ。」
うんうんと溶定は頷く。ここの女子生徒はこの先輩のどこがいいのだろうか。ゲームでも確かに必ず上位にいる人気キャラではあったが、本当にいるとウザすぎて仕方ない。
「なんですか?」
はあと耳元に息があたる。すぐにやめていただきたい。こういうふうに女性を一人ずつ今まで落としてきたんだとしたら逆に地道すぎてよく頑張りましたね!と、褒めてあげたくなる。
「君も俺たちの生徒会に入らないか?」
「嫌です。」
溶定は固まった表情をしているが、茗荷谷はそう来ることがわかっていたようでいつもの貼り付けた笑顔のままだ。
「公言されていないんだけどね。生徒会は学年上位三名と生徒会指名一名の構成なんだ。遊里は次の生徒会長に俺を指名するらしい。そこで俺は生徒会指名枠の指名権を獲得したわけ。それで俺は猫谷さんを指名する。」
へえ、生徒会ってそんな風に決まってたのね。っていうだけの感想だ。ほかの女子なら即答でイエスだろうが。
「前にも言いましたけど、私は部活もあるし委員会もあるんです。それが私にとってはすごく楽しいし、別のことでそれが疎かになってしまうのは嫌なんです。」
はっきりと、正当な理由をつけて断れた…。うん、何も間違ったことは言っていないぞ私。
「…それは困るな。猫谷さん勘違いしてもらっちゃ困る。これは提案じゃない命令だ。別に君に一々そんな了承を得なくたって俺が先生に君の名前を書いた書類を出せば即決なんだよ。」
さすがドSキャラ。本性の笑顔さえ絵になる。なんて冷静に考えているが、これはとてもまずい。てかなんで私なのよ。生徒会に入ったら面倒キャラの茗荷谷に加えてもれなく溶定もついてくる。耳元で囁くように茗荷谷は続ける。
「確かに君が普通の生活を送りたいのもわかる。でもどうかな?俺らの誘いを君が断ったと女子生徒たちが知ったら…。君はいつもの生活を続けていられるかな?」
「やっ…っっ…!」
はむっと耳をくわえられた。
「やあっぱり、耳弱いんだね。相変わらず可愛いなあ。」
くわえたまま話し続ける茗荷谷。息があたって徐々に顔に熱を感じる。
「茗荷谷、そのくらいにしとけ。ここは教室だぞ。私も外であったなら儚日を愛でたいがな。」
そう言ってもう一方の私の耳に髪をかける。その一言でようやく私の耳から茗荷谷の口は離れた。
「だって普段俺の誘いはほとんど断るくせに先生に呼ばれたからって騙されて来ちゃう猫谷さん可愛すぎない?俺たちが生徒会って時点でここの先生は俺たちの配下だってわかるもんなのに。」
「とりあえず私は、生徒会には入りません。申し訳ないですがっ!!」
立ち上がり去ろうとした時、やはり二人の手は私を離さなかった。
「遊里の言う通りかも、|教室じゃ(・・・・)だめだ。別のところに移動しようか。」
現世でもやはり死亡フラグはどうにもならないらしい。そう、諦めた時だった。ガラガラっと教室の扉が開く。
「ここで何をしている!」
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